12.20.2011

映画『Aftershock』を観た

中国映画『Aftershock(唐山大地震)』という映画をNetflixのストリーミングで観た。(中国で封切られたときのポスター↓↓)


唐山大地震というのは1976年7月に中国河北省唐山市で実際に起こった大地震で、人口100万人の産業都市だった唐山市の建物の実に94%が倒壊、死者は25万人(非公式には60万人以上)とも言われる20世紀最大の被害といわれる大地震。

映画のコピーにある、「23秒、32年。」というのは、実際に23秒間の激震が続いたそうで、そのわずか23秒間に起こった出来事が、登場する親子のその後の人生を大きく変え、32年後に再会するまで、それぞれの登場人物の魂の遍歴を扱った人間ドラマのフィクション映画だから。

中国政府も肝煎りで制作されたというだけあって、1976年当時(まだ文化大革命の最中)の中国軍の姿が完全に正義の味方として描かれていたりして、それはそれでやや意図は感じられたものの、なにせ中国がIMAXと制作した初の映画であり、封切り後この映画は空前の大ヒットとなって中国の商業映画としては過去最高の売上を記録した、というぐらいの超大作であります。

地震の大災害のシーンが中心のパニック映画かとおもいきや、むしろそうではなくて、地震そのものよりも、その後の家族の姿、夫婦愛、親子愛、家族愛、兄弟愛、人類愛・・・といった「愛」がテーマになってる感動ドラマで、私も観ながらところどころ泣けましたです。

この映画の監督も、「文革後の中国はひとの心や愛を見失ってしまった。いまこそ思い起こそう」というつもりで作ったと言っていて、ポスターにも「中国人的心」とあるように、監督の意図は十分表現されていたのではとも思いました。

ちょっとだけストーリーを種明かしすると、大地震が起きて家族が住んでいたビルが倒壊、幼い双子の兄妹(姉弟?)が瓦礫の下敷きになってしまう。瓦礫を取り除こうにも、一人を助ければもう一人が潰されてしまう。母親はふたりとも助けてくれと絶叫するが、どちらを助けるか選ばなければ二人とも死んでしまうと言われ、苦悩の果てに母はついに決心し、息子を助けてくれるよう懇願するのでした。しかし、女の子の方は奇跡的に生き残り、救世軍としてやってきた軍人夫婦に孤児として引き取られるが、あの地震の日に聞こえてきた母の言葉が頭を離れず、その後30年以上も実母が自分を選ばなかったことに深く傷ついて、わだかまりを抱いたまま生きてゆくことになる・・・。

極限状態でどちらかの子を選べと迫られる母親、というのは、メリル・ストリープが主演した永遠の名作『ソフィーの選択』(1982)にも登場したモチーフで、つい思い出してしまったほど。

個人的には、中国映画にはこの作品をはるかに超える名作が他にもたくさんあると正直思ったので、これまでみた中国映画として最高点とは私には言いがたいですが、いまの中国では、これはおそらく相当グッとくる内容なのではなかろうか・・・と想像をめぐらせました。

また、冒頭の大地震のシーンは、今年3月の東日本の震災の様子が生生しく思い出されてしまったのは、言うまでもありません。

ただ、ひとつ目を見はったのが、現在の唐山市の姿。空前の大地震でペッタンコになってしまった瓦礫の町が、30年後、ピカピカの大都市に生まれ変わっていた。(これはセットじゃなくて本物の町の様子。)映画の中で、薄汚れた古い長屋に断固として住み続ける母親に、新築コンドミニアムを買ってあげるから移り住めと勧める息子の姿など、彼の国のジェネレーションと価値観の移り変わりも垣間見ることができた、といいましょうか。

文革から経済大国へと国の姿は変わり、親の世代から子の世代へとジェネレーションは変遷しようとも、「中国人のこころ(中国人的心)」は変わることはない、変わってはいけない・・・と、そういう主題なわけですね。

この映画、日本でも『唐山大地震:想い続けた32年』という邦題で公開される予定だったそうですが、ウィキ情報によると、次のようにあります。

日本での公開  
2011年3月7日、日本配給を担う松竹は2011年2月22日にニュージーランドで発生したカンタベリー地震を受け、本作が「アクションやスリルを楽しむ映画ではないこと」などを理由として当初予定の3月26日の公開を変更しない方針を明かした上、3月12日から同社グループが呼びかけた募金や興行収入などを地震に対する救援金として日本赤十字社へ寄付する支援を開始すると発表した。 
しかし同社は2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震を受けて公開の是非を再び検討し、3月14日に公開の延期を発表した。奇しくもこの地震により被害を受けた九段会館では地震が発生した日の夜を含め複数日、本作の試写会の開催が予定されていたが、同日以降は全て中止となった。

よりにもよって、今年3月に日本で公開予定だったとは・・・。たしかに私も、この映画の地震のシーンを観ながら、とてもじゃないけれど、こころ穏やかではいられませんでしたので、日本での公開が見送られたのは当然の処置だったと思います。(本映画公式サイトはこちら。)

ただ、ここの説明文にあるように「アクションやスリルを楽しむ映画ではない」というのは事実そのとおりで、いつか日本でも公開される日が来るかもしれませんね。そのとき、この映画のラストシーンに登場する現在の唐山市が数十年でどれほどの変貌を遂げたのかを見た方は、東日本の被災地の復興ぶりと重ね合わせ、感慨深いものを感じるだろうと思います。

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