2.20.2012

Lean on Me

ホイットニー・ヒューストンの告別式の様子が、ニューヨーク時間土曜日正午からアメリカのTVでライブ放映された。私も長いこと彼女のファンだったので、見ました。

ホイットニーの遺体は生まれ故郷であるNJ州ニューアーク市に戻り、地元のバプティスト教会で、最初から最後までゴスペル音楽に包まれて、スティーヴィー・ワンダーやアリシア・キーズら大スターのライブ演奏もあったりして、幼少の時から教会の聖歌隊でゴスペルを歌っていたホイットニーを弔うのにふさわしいお葬式だった。

映画『ボディガード』で共演したケヴィン・コスナーも参列者のひとりとして弔辞を述べましたが、とても印象に残るスピーチだったな。下の動画はその一部(1:45)ですが、あれだけの名声を得た彼女ですら、「私は大したことない」と感じていたというエピソードを、ときどき喉を詰まらせながら語るコスナー。



(かなり大雑把な意訳ですが⇒)「名声を得ると、うまく説明できないけれど、それが重荷になったり不安を呼んだりする。僕自身もそう感じてたことがあったし、今日ここに来ている有名人もみな同じ気持になったことがあるはずだ。世界中で成功し有名になったホイットニーも、自分はこんなんでいいのか(Am I good enough?)、自分は十分に綺麗だろうか(Am I pretty enough?)、みな私のことを好きになってくれるだろうか(Will they like me?)、という不安と戦っていた。・・・もしあなたが「どうせ自分なんて・・・」と不安に感じることがあったら、ホイットニーに聞いてみるといいでしょう。彼女はきっと、大丈夫、自分を信じて自分に与えられた奇跡を称えなさい、と答えてくれるでしょう。・・・いま、彼女は天使たちに守られて天国に向かいました。ホイットニー、僕からこう言わせてください、君が神様の前で歌う時がきたら、心配しなくても大丈夫、君は十分に素晴らしいよ。(When you sing before Him, don't you worry, you'd be good enough.)」

この、I am not good enough. という表現、よく使われる英語表現。

私の大好きな歌手 Sarah McLachlan の『Angel』という曲の出だしにも出てきます。

Spend all your time waiting 
For that second chance, 
For a break that would make it okay. 
There's always some reason 
To feel not good enough, 
And it's hard, at the end of the day.




自分に自信がなくなるとき、自分がちっぽけに感じる時、自分なんて大したことないと感じる時。

人間、だれしも、そう感じる瞬間がある--。

★   ★   ★   ★

ところで、話変わって。

前にも書きましたが、ホイットニー・ヒューストンが生まれ育ったニュージャージー州ニューアーク市という町は、このところジェントリフィケーション(gentrification)が進みましたが、ホイットニーが過ごしたであろう70年代、80年代は貧しさと治安の悪さで有名なエリアでした。

私が1984年にミシガン州からNYに移ってきたとき、ニューアーク空港に到着したのですが、空港からバスに乗ってマンハッタンに向かう途中、バスの窓から見えた近辺の住宅街の様子が、それまで住んでいた中西部の豊かで小奇麗な町の光景とは似ても似つかぬ別のアメリカの姿をしていて、いよいよ悪名高いニューヨークに来てしまったんだ・・・と身震いしたのを今でもよく覚えています。(ミシガン州にいたころ、デトロイト市には行ったことあるけど、ゲットーに入り込んだ経験はなかった。)

モーガン・フリーマンが主演した『Lean on Me』という80年代の素晴らしい映画がありますが(邦題はなぜか『ワイルド・チェンジ』←題名チェンジしすぎだろw)、あの映画はニューアークの荒れた高校が舞台。近辺のエリアの高校で実際に起こった実話を元に、ドラマ化された映画です。


ホイットニーの告別式で溢れていたゴスペル音楽を聞きながら、この映画の、このシーンを思い出していましたよ。(この映画、また見たくなったな・・・。)

♬誰でも生きているうちは苦しいことや悲しいことが起こるものさ。でも必ず明日はやってくる。自分で解決できない問題が起きたら、私を頼りにするといいよ。

この歌詞を聞きながら思った。ホイットニーも、依存症で苦しんでいたとき、自分ひとりですべてを解決しようとせずに、誰かに助けてくださいと言えたらよかったのにね・・・。



(ちなみに、このシーンの他に、映画のエンディング・ロールでも『Lean On Me』の曲がかかりますが、エンディングロールで歌っているのはMarvin Winans、ホイットニーの告別式で最後にプリーチした、あの牧師さんです。)

告別式を見終わって思ったのは、ホイットニーのように、あんな稀有な才能に恵まれて世界中から愛された歌手でも、自分に自信がなくなったりするし、ひとりでは生きられないんだよなぁ・・・ってこと。

2 comments:

  1. 題意と離れて恐縮ですが、リスニングの勉強と思ってケビンコスナーの弔辞を聞いてみました。ブログ主さんのコメント欄を聞くのがやっとです。小生も英語圏での生活は過去にありましたが、とてもこの弔辞を文字書きすることは出来ません。すごいですね。どうやったら英語が上達することが出来ますでしょうか。

    ホイットニー・ヒューストンさんの御冥福をお祈り致します。

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  2. >Anonymousさん、コメントありがとうございます。
    外国語を一語一語正確に聞きとる(書き起こす)は、こちらの生活が長くても非常に難しいです。彼の弔辞、私もところどころ正確には聞き取れませんでしたし、全部を書き起こすとなるとかなり大変かもしれません。外国語学習は、あまり完璧さを求めず、「なんとなくわかる」程度でいいんじゃないのかなーと思っています。こちらに来たばかりの頃は、英語の歌の歌詞を聞きとるなどほぼ不可能でしたが、何年もイイカゲンに聞き流していただけなのに、いまではかなりわかります。(全部はわからないこと、いまだにあります。)

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