2.18.2015

Zoolander日記 (6) ブロマンス

「ブロマンス(Bromance)」という言葉をご存じですか?


映画『Stand By Me』- トレイラーはこちら


ウィキペディアに、こんな説明があります。


Bromance

A bromance is a close, non-romantic relationship between two (or more) men. It is a form of affectional or homosocial intimacy. The emergence of the term has been seen as reflecting a change in societal perception and interest in the theme.

 Bromance is a portmanteau of the words bro or brother and romance. Editor Dave Carnie coined the term in the skateboard magazine Big Brother in the 1990s to refer specifically to the sort of relationships that develop between skaters who spent a great deal of time together.


ブロマンス 

ブロマンス(Bromance)とは、2人もしくはそれ以上の人数の男性同士の近しい関係のこと。性的な関わりはなく、ホモソーシャルな親密さの一種である。 

Bromanceという単語はbroもしくはbrother(兄弟)とromance(ロマンス)のかばん語である。 スケートボード雑誌Big Brother編集者のデイヴ・カーニーによって、四六時中一緒にスケートボードをしているような関係という意味に限定して使うために造られた言葉である。


我が家のフランキーとズーランダーが、どうやら、ブロマンスに陥ったようです(笑)。


A photo posted by TrinityNYC (@trinitynyc) on

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ご対面を果たしたばかりのころは、メスのプリシラちゃんは、イケメン新米ボーイにちょっと気のある風なそぶりを見せて、嫉妬に狂った(?)フランキーは、プリちゃんに近づこうとするズー君に、ガウガウ攻撃をしかけて牽制していたんです。

ところが、3頭一緒に遊ぶようになってから、オスのズーランダーはメスのプリシラにばかり接近し、プリちゃんはだんだんイライラしてきて、

「しつこい男はキライよ!あっちいけ!」

と威嚇して、フランキーよりプリちゃんのほうが、むしろズーにガウガウするようになった。





プリシラに振られまくってるズー君を見ていたフランキーは、「俺の女」を守る必要がない、と踏んだのでしょうか・・・(笑)

ズー君とフランキーは、年の近い男子同志、盛んにじゃれ合い、並んで競争したり、体当たりしたり、相撲を取ったり、荒々しく遊ぶようになり、いつしか、ふたりは、どこにいくのも一緒のブロマンスな関係に―。


フランキーの行く先を追いかけてゆくズーランダー

米北東部は気温が連日摂氏マイナス10度~マイナス20度にもなり、雪も積もりました。

ワンコ同志の仲間意識の作り方は人間のわたしには計り知れないと前回の日記では思ったものの、その後の展開をみるにつけ、ワンコ同志のリレーションシップは、【人間関係の縮図】そのものでもあるな・・・としみじみ思うのだった。

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2.12.2015

Zoolander日記 (5) 先住犬

前回、ズーランダーがケンネルコフ(犬がかかる悪性の急性気管支炎で、肺炎に至ることもある)にかかっていたため隔離されているので、うちのワンコ達とは正式にご対面していない、と書きました。

しかし、抗生物質のおかげで症状は治まり、いよいよ、プリシラとフランキーとズーランダーの三者正式ご対面の時がやってきました。

犬は群れ(pack)を作る社会的動物で、群れとしての縄張り意識もとても強く(それゆえに縄張りに近づく不審者には吠えかかり番犬になれるわけなのですが)、群れの中で誰がリーダーかが極めて重要なため、新参者のワンコを自宅に迎え入れるときは、そうした「群れのバランス」について、いろいろ注意が必要です。

フォスターとして一時預かりした子と先住犬がすぐに仲良くなれるとは限りません。ワンコも最初は誰でも警戒し合い、ちょっと距離を置いて、お尻のにおいを嗅ぎ合ったりして、互いを知ろうと努めます。

わたしたち人間もそうですよね。どんなに感じが良さそうな相手でも、会った瞬間にコイツ胡散臭いと直感したり、目が笑ってなくて好きになれないとか、そういう「動物の勘」みたいなもので、初めて会った相手を判断し警戒し、ときには威嚇したりしてますもん(苦笑)。


初めてのご対面から数日後、3頭一緒に、近所の自然トレイルを歩きました。それまで、ズー君が近づくと決まって威嚇していたフランキーですが、この時初めて、フランキーの方からズー君に近寄ってきました。これなら上手くいくかもしれない・・・と、その時、泣けたよ。


   ★     ★     ★     ★     ★


犬によっては、新しい犬が突然群れに入ってきても、すぐに適応し仲良くなれる犬もいます。

でも、もし、先住犬が新参者を受け入れないとなると、常にストレスの高い状態が生じ、共同生活に支障をきたし、フォスターを続けることも不可能になりかねません。

うちの場合は、全員が身体が比較的大きい犬同志なので、噛み合いの大喧嘩にでもなったら、私一人では止められません。

私が属しているレスキュー・グループには、プロのトレーナーや多くのフォスター経験者がいます。今回我が家でプリちゃんとフランキーをズーランダーと会わせる際に、初心者の私は、どういう注意が必要か、彼らが長年蓄積したノウハウから教えてもらいました。その他にも、ドッグウォーカーをしている友人や、村の犬猫保護員をしてる隣人からも、いろいろ細かいアドバイスをいただきました。



  1. まず、最初のご対面の場所は、先住犬の縄張り内では行わないこと。どちらの犬にとってもニュートラルな(縄張りとして認識されてない)エリアを選び、そこで、力関係においてより上位にいる犬を最初に紹介する。
  2. 紹介する際は、最初は一頭一頭紹介し、くんくん相手のお尻のにおいを嗅いだりさせるが、万一ムードが悪化して喧嘩になりそうな場合は、すぐに離せるように、どちらの犬にもリーシュ(リード)をつけておく。
  3. 散歩するときは、横に一列に並んで、わたしら全員一緒に行動する仲間だよ、というメッセージを発する。
  4. どちらかが、背中の毛が逆立ったり、歯をむき出したり、といった「恐れ」の行動に出たときは、無理強いしない。
  5. みんなが一緒に時間を過ごす部屋(リビングルームなど)にケージを置いて、ケージに入れて接触させない状態で、いっしょにスペースを共有することに慣れさせる。
  6. 自宅の庭でリーシュをつけず遊ばせるときも、先住犬が縄張りをクレームして攻撃に出たりすることもあるため、最初のうちは常に監視しすること。
  7. 慣れてくるまでは、先住犬の近くで、新しい犬に食事を取らせない。(新参者が先住犬の食べ物に近づくといきなり攻撃されることがあるため。)
  8. ゆっくり、ゆっくり、時間をかけて、焦らずに少しづつ、一緒に過ごす時間を伸ばしてゆく。

    ★     ★     ★     ★     ★


    フランキーが我が家に加わった時、フランキーはまだ9週間目の子犬でした。先住犬だったプリシラちゃんは最初は混乱していたようですが、相手が子犬だったせいか、プリちゃんが幼いフランキーを受け入れるのに、さほど問題はありませんでした。


    5年以上前、子犬だったフランキーが我が家の一員になったばかりの頃。小さくてフワフワで、プリシラちゃんの後をくっついては、なんでもプリちゃんのマネばかりしていました。


    でも、ズーランダーはすでに推定4歳以上の成犬。人間でいえば20代後半。しかも、筋肉質で逞しい体格のオスのピットブル。

    この5年以上のあいだ、先住犬のプリとフラの2匹は強力な絆を築き上げ、散歩中も、別の犬とすれ違うと、相手の犬によっては、互いに互いを守ろうとします。そんな強い絆で結ばれたプリとフラの間に、急に去勢前の成犬が割り込んで来たらどうなるか・・・。

    さらにマンハッタン時代は外に出れば知らない犬とすれ違うという、いやがおうにも社会性を身に着けなくてはならない環境でしたが、郊外に越してからは、プリとフラはそんなに頻繁にいろんな知らない犬と顔を突き合わさなくなっていたんです。

    わたしにも、少なからず心配はありました。


       ★     ★     ★     ★     ★



    ご対面初日、我が家の敷地の外に別々に連れ出し、少し離れて散歩をすることにしました。散歩中は、チラチラと様子を伺いながらも、♪ふんふんふーーん♪といった顔でクールに歩いてたプリとフラ。ところが、いったん皆で我が家の敷地の中にはいると様相が変わり、やはり、縄張り内ではズーランダーを警戒してるのが明らかでした。

    その後も数日は、ズーランダーが近づくと、プリちゃんは牙をむくし、フランキーはほとんど攻撃に近いような反応をして激しく吠えて襲い掛かろうとしたりで、ハンパない【拒絶ぶり】でした。

    遊びたいのに拒絶され、寂しそうにズーランダーが私に近づいてくると、こんどは、それを見たフランキーが全速力で走り寄ってきて、わたしとズーの間に入り、ズーに牙を剥いて、飼い主のわたしを守ろうとするのです。

    「ズーは敵じゃないよ、ズーはこれから一緒に暮らす兄弟だよ」といくら言ってきかせたところで、人間の言葉が通じるはずもなく。

    病気のズーが我が家に来てから圧倒的に多くの時間をズーに費やしていた私を見て、プリとフラは自分らが忘れられたような不安な気持ち、あるいはジェラシーを抱いたのかもしれません。

    また、ズーは去勢されておらず、去勢済みのフランキーが、ことさら張り合おうとしたのも、オス同志なんらかのライバル意識があったのかもしれません。

    ところが、ある日突然に、ほんとうに突然に、です。ズーは「群れの仲間」になってました。

    彼らに何が起こったのかは、わかりません。

    突然に、唐突に、プリシラとフランキーは、ズーを受け入れ、ズーと仲良くなろうと決めたようでした。

    一度そう決断したら、その決断に疑問を挟まない。人間よりずっと潔い。

    一緒にガンガン遊ぶ。

    遊び疲れると、からだくっつけてグースカ寝れるぐらいに、いまではお互いを認め合っています。

    最初は新参者を威嚇して唸ったり吠えたり、険悪なムードにわたしもなんだか心配になり、「仲良くしてあげなさい!」とプリとフラを叱ったりしてました。

    でも、どんなにガウガウ吠えかかっても、フランキーは決してズーに本気で噛みついたりしませんでした。

    ズーのほうも、どんなに威嚇されても、決して逆襲したりせず、距離を置き、少し経つとふたたび「あそぼ!あそぼ!」モードに戻り、仲間に入れて欲しいというジェスチャーを続けて、プリとフラに自分から近づいていっていました。

    人間の私にはわからない、ワンコ同士の「仲間意識の作り方」があったのですね。


    ストーブの前の黒い花崗岩の石版は熱でじんわりと暖かい。岩盤浴ブームかw 



    氷点下の気温が続く中、食後は毎日暖炉の前で一緒になごむ、プリ、フラ、ズー。

    (続く)



    2.07.2015

    氷の結晶

    私が住む北ウェストチェスター(Northern Westchester)では、昨日(木曜日)の朝の気温が摂氏マイナス18℃まで下がりました。

    まさに「切れるような」冷たさ。積もった雪も解けることなく、あたりは一面雪景色です。




    我が家の脇に真冬でも流れ続ける小さな水流があるのですが、水の温度のほうが空気よりずっと高いためでしょうか、とても綺麗な結晶が水の上に一面作られてるのを発見しました。

    自然の作る美。





    1.30.2015

    Zoolander日記 (4) ケンネル・コフ

    我が家に来てからのズーランダー、ものすごく食欲があり、来たばかりのころ見えてた肋骨もまったく見えなくなりました。

    暖かく清潔で静かな環境で、たらふく食べて飲んで寝て遊んで甘えているせいか、表情も日に日に柔らかくなってきています。


    それにしても、この子、ちょっと信じがたいほどの甘えん坊さんです。フレンドリーな犬だとは聞いていたけど、こんなにデレデレな子だとは・・・。

    私がピットブルを一時預かると言ったとき、うちの夫は、ピットブルという犬種名を聞くやいなや、世間一般にありがちの偏見丸出しにして、

    「ピットブルなんて危険じゃないのか」
    「噛みつかれたら確実に死ぬぞ」
    「生まれつき獰猛かもしれないぞ」
    「プリちゃんとフランキーが怪我したらどうするんだ」

    と、わーわーぎゃーぎゃー言ってたくせに、いまでは自分からべたべたとズーランダーに抱き付いては、

    He's the BIGGEST MUSH!

    と言っています(笑)。mush というのは、英語で「べろんべろんに甘えん坊」のことです。


    私が横になると、かならずこうして、ぴったり添い寝をして、くっつきたがります。


    いまでは、ズーランダーがプリとフラを攻撃することより、プリとフラが自分達の領域を侵害されたと思って、逆に防衛本能発揮して、吠えかかったり襲い掛かったりしないだろうか・・・ということのほうが、より心配になってきました。

    ズーランダーが我が家に来てからすでに2週間近くが経つわけですが、プリとフラの2頭と、ズーは、実は、『正式ご対面』をいまだ果たしていません。

    ときどき互いに顔を見たり、少し距離を置いて一緒に散歩したりしいるので、プリとフラは、「見慣れないヤツがいる」と意識はしているのですが、まだ完全に"群れ(Pack)の一員"としてズーランダーを紹介されていません。

    ズーランダーは基本的に、自宅内にいるときは、わたしの自室の中で過ごしているようなものです。

    なぜすぐに一緒に遊ばせなかったか―。

    その理由は、ズーランダーは、保健所にいる間に、通称『Kennnel Cough』という犬がかかる悪性の風邪にかかってしまっていたからなのです。


    ★   ★   ★   ★   ★


    通称『Kennel Cough』と呼ばれているのは、Bordetella bronchiseptica : ボルデテラ・ブロンキセプティカ」というバクテリアが原因で犬などの動物がかかる急性気管支炎のことです。息するたびにゼイゼイという雑音(wheezingといいます)が混じり、ときどき、大きなクシャミをしたり、ゲホンゲホンと咳をするのです。この段階で抗生物質等を投与するなどして治癒をこころみますが、環境次第では肺炎に悪化することもある、怖い病気です。

    肺炎に至ってしまうと、人間と同じで、大変な治療が必要になります。この Bordetella bronchiseptica というバクテリアは人間には感染しないそうですが、犬同士では非常に感染力が強く、治療も大変高価につくため、罹患した犬は完治するまで健康な犬からは隔離する必要があるのです。

    想像するに難くないと思いますが、保健所のような、最高に清潔とはいえない場所で、多くの犬が詰め込まれている環境ですと、たとえ最初は健康な犬でもバクテリアに感染し、気管支炎の症状を示し出すのが常、と言われています。

    ズーランダーの場合、保護され市のアニマルコントロールセンターに収容された1月6日の最初の時点では、痩せぎすだったものの健康という見立てをもらっていました。しかし、マイナス8℃という厳寒の日に捨てられ放置されてたことも影響したのでしょうか、1月12日の医療検診では、担当獣医が「Kennnel Coughの症状あり、投薬」と記録しています。

    下は、保健所で殺処分になる可能性の高い犬を紹介するフェースブックサイト「Urgent Death Row Dogs」に掲載されたズーランダーのページです。ここに、1月12日付の医療情報(Medical Information )として、こう書かれていました。


    nasal ocular discharge sneezing marks on kennel coughing heard A:kennel cough as per Dr 1009 setting up on TX of 2 Tab of doxycycline SID for 10 days start: 1-13 end: 1-22 recheck: 1/20

    医師番号1009の検診、鼻水、くしゃみ、ケンネルコフの症状、
    doxycyclineを処方、1月13日から1月22日まで10日間2錠づつ投薬、1月20日に再検査



        


    ズーランダーは気管支敗血症の菌を移された犬。その他にも、いろんな菌を持ってるかもしれない。

    我が家のプリシラとフランキーはもちろん健康そのもので、ズーランダーから病気を移されたくないということで、我が家に来てから最初の10日間ほどは、完全隔離していました。

    わたしも夫も、ズーランダーを触るたびに、他の2頭を触る前に必ず殺菌力あるハンドソープで手を洗い、彼の餌や水に使用したボウルもお湯と殺菌性ある食器洗剤で他の食器と別にして洗い、決してプリとフラの触るものに触れさせないように、気を配りました。

    用を足すためにズーを外に連れ出すときも、まずはプリとフラを別室に閉じ込め、それからガレージを通過させて外に連れ出しました。プリとフラは、なぜ何度も自分らが部屋に閉じ込められなくちゃならないのか、納得いかないようでしたが、全員肺炎にでもなったらエライことになるので、念には念を入れました。

    2週間ほど前、我が家に到着したばかりのとき、ズーランダーの呼吸は明らかに「ゼイゼイ」という雑音がしていて、気管支炎を患っているのは明らかでした。しかし幸いにも、彼の食欲はまったく落ちることがなく、ごはんのたびにモリモリ食べて、薬のおかげで徐々に回復してゆくのが手に取るように私にはわかりました。

    この病気が進行すると、食欲減退という症状が顕著に出るそうなのです。

    そして、そこまで症状が進んでしまうと、保健所という場所では、手厚い看護をしてあげることが困難になってきます。なぜなら、ニューヨークの野良犬収容所には、毎日、次から次へと新しい野良犬が捕まって送られてくるからです。

    つまり・・・

    Kennel Coughにかかりやすい環境に置かれ、たとえ健康な犬でも、そこに長く留まれば感染症にかかってしまう可能性が高いという悪循環。そして、病気を移された犬を長く看護してあげる手間ヒマもおカネも、そこにはない。施設内にそれ以上感染を拡大させないためにも、感染して症状の回復しない犬は、そのままそこに置いておくことはできない、むしろできるだけ早くいなくなったほうがよい。

    上述したように、記録によると、ズーランダーは、1月22日まで投薬して様子を見よう、という獣医師の判断でした。

    でも、覚えていますか?この日記の2回目に書いたように、彼は1月15日には、殺処分リストに載ってしまったんです。

    つまり・・・

    Kennel Coughにかかってしまう、そのこと自体が、保健所のような場所では、「死刑宣告を受けるのに十分な理由になる」という意味なのです。

    (続く)

    1.26.2015

    Zoolander日記 (3) 生い立ちの謎

    ズーランダーを渡されたとき、彼の首には、こんなタグが首に巻かれていました。



    A1024830
    Stray
    1-6-15

    『Stray』とは「野良犬」ということです。ズーランダーは、NY市の保健所に相当するアニマルコントロール局(ACCNYC)が作成した書類を幾枚か持たされてやってきました。

    その書類によると、彼は今年の1月6日にニューヨーク市の中でもお世辞にも治安が良いとは言えないサウスブロンクス(South Bronx)の路上で市の捕獲係に保護され、午前9時半ごろにマンハッタンの収容所に入れられて、A1024830 というID番号をつけられた。

    1月6日というと、ニューヨークでは、早朝の気温がマイナス8℃まで下がった日です。

    アニマル番号A1024830、名前Zoolander、白と茶のぶち、オス、犬種はアメリカン・ピットブル・テリア、去勢されておらず、持ち込まれたときの体重が48ポンド(22㎏)・・・といったデータが並びます。書類のメモ欄には、顔の左側に古い傷があること、首の回りを怪我しているが恐らくフェンスにチェインで縛り付けられたときにチェインが食い込んで付いたものだろう、などとも書かれています。

    つまり、ズーランダーは、正月明けの寒い日に、おそらくそのエリアに住む何者かが、力の強いピットブルでも動けないようにその太い首にチェインを巻きつけ、ゲットーの広場のフェンスに縛り付け、放置して行った犬なのでした。


    ズーランダーと一緒に渡されたNY市動物保護課作成の書類


    どれぐらいの時間そうして縛られていたのかはわかりませんが、首の回りはうっすら毛がなくなって肌が見えてるほど、何かが食い込んだような跡になっています。顔の横の傷は、どう見ても、噛まれて犬歯が食い込んでできたような傷です。

    体重は、私も最初48ポンドと聞かされていたので、うちのプリシラちゃん(40ポンドぐらい)とフランキー(65ポンドぐらい)の中間ぐらいの大きさの犬なんだろうと思っていたのです。しかし到着してみると、プリシラちゃんより軽くひとまわりは大きい逞しい犬で、体重もフランキーと同じぐらいはある感じでした。

    捕獲されたとき、プリシラちゃんよりちょっと重いぐらいまで痩せていたズーランダー。保健所に収容されてからは、一週間以上、安い餌でも毎日食事と水が与えられ、それで体重が少し増えたのでしょう。それでも脇腹の肋骨がほんの少し浮いて見えていました。

    そして、もうひとつ気づいたことがあります。それは、ズーランダーは推定4歳の成犬なのに、足の裏の肉球が、生後数週間目のパピーのように、つるつるスベスベで柔らかかったのです。

    まるで、歩いたことがないように―。

    毎日私と何キロも散歩する我が家のワンコ達の肉球は、ガサガサと固くなっています。ズーランダーを連れて家の周りを少しの距離ゆっくり散歩した最初の日、ズーの肉球はすりむけて、血が滲んでしまいました。

    顔にハッキリと噛み傷とわかる傷を持ち、そんなに痩せて、屋外を散歩させてもらっていた風でもなく、去勢もされず、最後は不要になって、厳寒の中フェンスにチェインでくくりつけられ捨てられていたピットブル。

    ズー・・・あなたは、これまで、誰と、どんな生活を送っていたの・・・?

    (続く) 



    部屋の一角に置かれたデイベッド(Day Bed)がお気に入り。



    1.23.2015

    Zoolander日記 (2) 殺処分リスト

    さて、「ズーランダー」という一風変わった名前ですが、映画ファンならすぐに、ベン・スティラー主演の超おバカ映画『Zoolander』(2001)を思い出すのではないでしょうか。



    この名前、私たちが考えて付けたわけではなく、ニューヨーク・シティのアニマル・シェルターが付けた名前なのです。

    ズーランダーは、NY市の野良犬捕獲課に捕まった野良犬、前の飼い主が誰かもわからない、名もない「捨て犬」でした。

    わたしがズーランダーの存在を知ったのは、NYシティがシェルターに収容した野良犬や捨て犬を紹介するフェースブックの里親探しページでした。

    NYシティにはかなりの数のワンコが住んでいて、ストリートやドッグランでは、私みたいな親馬鹿オーナーに連れられた犬をたくさん見かけます。

    「ドッグウォーカー(Dog Walkers)」という、飼い主に代わって犬をお散歩させるのを「職業」にしてるひとも大勢いて、わたしもうちのコ達をマンハッタンの街なかを散歩させながら、犬をぞろぞろ引き連れて歩いているドッグウォーカーさんらとすれ違うこと、しょっちゅうでした。


    Source: https://sallanscorner.wordpress.com/2011/01/10/ 


    それだけ犬の多いNYシティに30年近くも住んでましたが、マンハッタンの道や公園では「野良犬」を見かけることは、実はあまりありませんでした。


    ★   ★   ★   ★   ★


    うちでもう5年以上飼っている雑種のプリシラとフランキーも、もとを辿ると捨て犬でした。最初に来たプリシラは9ヶ月目のときに前の飼い主さんの飼育環境劣悪で痩せ細っていたのを引き取り、次に家族になったフランキーの方は生後すぐに捨てられてシェルターにいたところをまだ子犬の9週間目で引き取りました。

    プリシラに出会うまでは、私自身がアメリカの犬猫事情に完全無知で、ニューヨークの繁華街の通りに面したペットショップのウィンドウ前で、ころころ遊んでる可愛い子犬の姿に思わず立ち止まり、目を細めていたものです。

    「犬を飼いたいな・・・」と思い始めたときも、マンハッタンでどうやって犬を入手するのかすらよくわかっていませんでした。まずCraigslistに「わんこほしいで~す、引き取りま~す♡」と無邪気にWanted広告を出したというぐらいの無知ぶりです。(すぐに大勢の人たちからフラッグを立てられてポストが削除されたのですが、削除される理由もわかりませんでした。)

    次いで、自宅アパート近所に大きなペット用具ショップPetcoがあることを思い出し、そこにノコノコでかけて行って、店員さんに「あれ?お宅はワンコを売ってないの?ワンコ売ってる店、この近くにありませんか?」とたずね、ギョッとした顔をされたのも、この私です。

    「生体販売」がどういうことか、ぜんぜん、わかってなかったんです、わたし・・・。

    ギョッとして私を見たPetcoの店員さんは、すぐに気を取り直し、「うちの店は犬猫用品は売っているけど、生きてる犬猫は売らないの。もし犬を飼いたいなら、ここに行ってみるといいよ」と言って、紙に3か所ほどのマンハッタン内のシェルターの名前と住所を書いてくれました。

    言われるとおりそこに出かけて行って初めて、わたしはシェルターに収容されている犬猫たちを実際に見たのでした。

    以来、無知の極みだったこの私も、動物シェルターについて興味を持ち、いろいろ読んだり調べたりしていましたが、数年前に偶然にフェースブックのあるページが目に入り、ひとくちにシェルターといえども、また一段異なるレイヤーがあることに気づかされたのです。


    ★   ★   ★   ★   ★


    偶然視界に入ったそのフェースブック・ページは、『Urgent Part 2 - Urgent Death Row Dogs』というタイトルのページでした。

    英語で Death Row というのは、刑務所で死刑囚が収容される一角のことです。死を待つ場所。

    そのFBページには、毎日(毎日です!)ニューヨーク市の野良犬収容所(Animal Care & Control of NYC、略してACCNYC)で殺処分されることが決定した犬の顔写真が今日は5頭、明日は10頭・・・と掲載され拡散されるのです。ただし、毎日リストを更新しているのは市の収容所(保健所)ではなく、このページを運営する非営利団体です。

    今日、いま、これを書いてる最中も、『To Be Destroyed 死刑宣告リスト』は更新され掲載されています。

    我が家で預かることになったズーランダーは、このリストに、「2015年1月15日分」の一頭として掲載されたのでした。(上段真ん中)

    上段真ん中がズーランダーです。

    (続く)




    1.21.2015

    Zoolander日記 (1) フォスター犬

    わたしは年末にこんなツイートしました。

    去年からずっと心の中でプロジェクトとして温めてたこと。それは、

    「捨てられたわんこのフォスターさんになる」

    というプロジェクトです。

    フォスター(Fostering)というのは、何らかの理由でホームレスになってしまったペットにアダプション(Adoption)してくれる最終的な飼い主(里親さん)が見つかるまで、一時的にその犬を我が家で預かってお世話してあげることです。

    一昨日の1月19日、我が家に一時預かりで、Zoolander という名のピットブルがやってきました。


    私の車に乗って、我が家に向かう。

    我が家の近所にある馬牧場(ホースファーム)の周りを軽くお散歩。
    馬を見たのは初めてなのかな。興味深々で見つめてる。

    我が家に到着。わたしの部屋で、まずは一息。

    翌朝。静かな部屋で熟睡できましたか?

    ズーランダー君、かなりのイケメンです。体つきも強くたくましく、しかも気立ては優しいみたいで、まさに

    「理想の男性像」

    を体現してますね。(←さっそく親バカモード突入) 

    この初めてのフォスター体験について、今日から、すこしづつ書いていこうと思います。